🐾
月曜二十三時の少し前。
当然のように街灯くらいしか灯りのない住宅街のカフェに、約束通り福田さんは来てくれた。
「すみません、こんな時間に呼び出してしまって」
「いえいえ。家にいても鬱々としてしまいますから……」
そう言って彼女はまたシュンと小さくなってしまった。
「ところで津奈子さんって、どこかでお会いしたことがあったかしら?」
「え?」
「先日の猫の夢のことを思い出したのだけれど、なんだか津奈子さんに似た女性もいたような気がして……」
「あ、あはは。よくある普通の顔ですから! じゃあ、入りましょうか」
トーティの店内の様子に福田さんは「真っ暗じゃないですか」と不安げだ。
金曜と同じようにラジオブースのドアを叩いて、それから引く。イヤホンも片耳にセットした。
「こんばんは」
『ツナさん! こんばんは』
機材スペースのシナモンが目に入る。ザラメはスタジオにいるようだ。
「え? なあに? 猫……?」
福田さんが顔を出すと、シナモンが『ニャ!』という声とともにピョンッと後ろに飛び跳ねて背中をアーチみたいに丸めた。
『ど、どうしてその方がいるのですか!?』
「えーっとね――」
説明しようとしたところで、スタジオのドアが開いた。
『なんでそいつがいるニャ!』
ザラメはシナモンなんか比じゃないすごい剣幕だ。
『生身のニンゲンは来られないって言ったはずニャ!』
「う、うん。だから――」
「津奈子さん、これは一体? 猫たちが怒っているように見えますが」
福田さんもますます不安げな顔をしている。
「えっと……」
「も、もしかして、新しい猫に会わせるために私を連れてきたんですか? ムーを忘れさせるために」
「ち、ちが」
福田さんの声は震えていて、涙交じりの中に怒りが含まれている。
『どういうことニャ!』
「どういうことですか……!?」
一人と二匹の声に加えて、イヤホンをさしていない方の耳からは「ニャーニャー」「シャーシャー」と猫バージョンの声も聞こえてくる。
「津奈子さん!」
『ツナ!』
『ツナさん!』
狭い室内で声が耳に反響する。やかましいってこういうことだ。
「あーもー!! 全員うるさいっ!」
月曜二十三時の少し前。
当然のように街灯くらいしか灯りのない住宅街のカフェに、約束通り福田さんは来てくれた。
「すみません、こんな時間に呼び出してしまって」
「いえいえ。家にいても鬱々としてしまいますから……」
そう言って彼女はまたシュンと小さくなってしまった。
「ところで津奈子さんって、どこかでお会いしたことがあったかしら?」
「え?」
「先日の猫の夢のことを思い出したのだけれど、なんだか津奈子さんに似た女性もいたような気がして……」
「あ、あはは。よくある普通の顔ですから! じゃあ、入りましょうか」
トーティの店内の様子に福田さんは「真っ暗じゃないですか」と不安げだ。
金曜と同じようにラジオブースのドアを叩いて、それから引く。イヤホンも片耳にセットした。
「こんばんは」
『ツナさん! こんばんは』
機材スペースのシナモンが目に入る。ザラメはスタジオにいるようだ。
「え? なあに? 猫……?」
福田さんが顔を出すと、シナモンが『ニャ!』という声とともにピョンッと後ろに飛び跳ねて背中をアーチみたいに丸めた。
『ど、どうしてその方がいるのですか!?』
「えーっとね――」
説明しようとしたところで、スタジオのドアが開いた。
『なんでそいつがいるニャ!』
ザラメはシナモンなんか比じゃないすごい剣幕だ。
『生身のニンゲンは来られないって言ったはずニャ!』
「う、うん。だから――」
「津奈子さん、これは一体? 猫たちが怒っているように見えますが」
福田さんもますます不安げな顔をしている。
「えっと……」
「も、もしかして、新しい猫に会わせるために私を連れてきたんですか? ムーを忘れさせるために」
「ち、ちが」
福田さんの声は震えていて、涙交じりの中に怒りが含まれている。
『どういうことニャ!』
「どういうことですか……!?」
一人と二匹の声に加えて、イヤホンをさしていない方の耳からは「ニャーニャー」「シャーシャー」と猫バージョンの声も聞こえてくる。
「津奈子さん!」
『ツナ!』
『ツナさん!』
狭い室内で声が耳に反響する。やかましいってこういうことだ。
「あーもー!! 全員うるさいっ!」



