「うわあ、なんで今日こんなに混んでるんだろ」
「なんかのライブとかじゃねえ?」
「あー……ぽいっすねぇ」



駅前にある店は、普段から学生や仕事終わりの大人で溢れているけれど、今日に限って近くでライブイベントがあったようで、俺たちが訪れたハンバーグレストランも、まだ十八時前だというのにかなり混み合っていた。


「結構待つ感じっすね……違うとこにしますか?」
「肉が食いたかったんじゃないの? テイクアウトして俺の家で食うとかにしてもいいけど」



便利な世の中なので、テイクアウトできる店が増えたのは嬉しいことだ。並ぶよりは、このままテイクアウトして帰ったほうが家でゆっくりくつろげるし、三百円安くもなる。遥とは帰る方向が一緒だしちょうど良いだろう。遥が良ければだけど。

と、ただ本当にそう思って提案しただけなのだが、遥は眉間に皺を寄せ、「湊先輩さぁ……」と小さく口を開いた。



「ムカついてきた」
「はあ?」
「なんでもないですけど別に。食いますよ、行かせてくれるんですか? 行かせてくださいよ先輩の家。オレが言い出したんじゃないですからね。知らんですからね」
「なんで怒ってんだよ」
「先輩が迂闊だからですバーカ」



バーカって、ガキかお前は。内心そう思いながらも、遥が怒っている理由は深掘りしなかった。