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「てかお前俺の親に余計なこと言ったろ」
「オレはいつも必要な事実しか言わないっすよ」
「それが余計だっつってんだよ」
「えー?」



それから、遥と一緒にいる時間は自然と増えた。自然とというか、俺からしたら必然で、遥からすれば意図的に増えていると言うのが正解なのだけれど。

昼休みは「一緒に食べましょー」と突然教室に来たり、放課後は見計らっていたかのようなタイミングで「一緒に帰りましょー」と追いかけてくるし、「方向同じついでなんで」とか言って家まで送ってくれたりする。最近は家に着いたときにちょうど母が出てきて、なんだか楽しそうに話していた。

今朝、母に言われたのはその時の会話の内容だったんだと思う。

モテるとか、欲しいとか、嫉妬する―――とか。



「それで先輩、そろそろ変わってきました?」
「何……」
「オレと付き合ってもいいとか、思うようになってくれました?」



遥の瞳が真っ直ぐ俺を捉えている。

真っ直ぐすぎて、怖かった。勘違いして、結局自分だけが傷つくんじゃないかと、今だけの勢いで揶揄われているだけなんじゃないかと、俺は今でもずっと遥のことを疑っている。



「嫉妬しちゃうんですよ。欲しい、早くオレだけの湊先輩になってほしい」
「俺男だって」
「男だから、なんですか? それ、先輩の価値観で言ってるのか世間体に合わせて言ってるのかで話変わってくるんですけど。湊先輩はどうなのか知りたいんすよオレは」



遥は、俺とは違う。

不本意ながら、一緒にいて楽しいとは思う。けれども、顔面至上主義なところも、性別問わず人に恋をできるところも、それに後ろめたさを感じていないところも、俺の感覚とは到底交わらない。

俺は遥みたいに人前でベタベタくっつくことは得意じゃないし、一般的に女に受けるとされてもてはやされるこの顔も、自分という生態を周りに知られるのも嫌だ。


「先輩、オレ本気ですよ。先輩のこと絶対好きになる自信あるっすもん」
「それまだ好きになってねーじゃん」
「あれ。じゃあ好きだ、多分もう最初から惚れてた!」
「後付けすぎるから信用できない」
「きびしーってせんぱぁい」


俺って本当バカみたいだ。
簡単な言葉に期待なんてもうしたくないのに。