ただ、君に笑っていてほしかった。~30日の奇跡と、空白の19日の秘密~

 カーテンの隙間から差し込む光。
 眩しくて、思わず目をつぶってしまう。
 一階からは、なんだか忙しそうな声がするが、俺には関係ない。
『……起きるか』
 リビングでは、満月(みつき)がぐったりしている。
「大丈夫か、満月(みつき)……」
「うん、まあ。……あ、はい」
「三十八度……。熱があるわね。今日は休みましょう」
「うん……。風邪かな……」
 そういえば、最近風邪が流行っているらしいって、雪宮(ゆきみや)が言ってたな。
「……お母さん、仕事行くから。学校休む連絡は入れといたから」
「うん、ありがと……」
 満月をじっと見つめてしまう。
 ……良いな、満月(みつき)は。
 愛されていて。
 必要とされていて。
 ……俺にはないものを持っていて。
「じゃあ、父さんも行くな」
「うん……。いってらっしゃい」
 しんどそうな満月(みつき)を、なんとなく、置いていけない気がした。
 とりあえず、雪宮(ゆきみや)の家に向かう。
「……葉月(はづき)?」
『あ、雪宮(ゆきみや)……。実はさ……』
 雪宮(ゆきみや)の家の近くの公園でばったり会う。
 雪宮(ゆきみや)には、この前、家を教えてもらった。
「そっか、弟さんが……。うん、今日は、近くにいてあげな。視えないだろうけど、何か感じるかもだし。体調悪い時って、心細くなるもんね」
 雪宮(ゆきみや)は、優しく微笑んだ。
 ……でも、俺なんかがいても、満月(みつき)は喜ばないだろうな。