ああ、やばい。
選択を間違えた。
今まで見たことのない碧斗の表情に俺は何を言っていいか分からなかった。
「俺をダシに使って女の子と関われて楽しかった?」
「ち、違うんだ!だから、その……」
だって……碧斗だって水野先輩といい感じだった、から。
あの時、告白は断ったよってハッキリ言ってくれなかったから。
だから俺、なんかむしゃくしゃして……。
何を言ってもいいわけにしかならない。
分かっているけど、目の前の碧斗が怖くてなにかを探してしまう。
「前、凪はさ……俺に聞いたよね。なにをされるのが一番嫌いかって」
「そ、それは……」
碧斗の顔が明らかに怒っていることだけが分かる。
「俺は答えたはずだよ。自分をダシに使って女の子と遊ばれたくないって」
たしかに言っていた。
あれは碧斗から聞き出せた唯一の嫌なことだった。
それを俺は、してしまったんだ。
「……そんなに、俺と付き合うの、嫌だったんだね」
碧斗の顔は今にも泣きそうな顔をしていた。
「ち、ちが……そうじゃなくて」
俺は慌てて言葉を探すけど、なにも出てこない。
喉の奥がからからに乾いて、声すらまともに出なかった。


