「……なんだよ」
俺は、足を止めずにぶっきらぼうに返す。
「どうかしたの?」
「別に」
お前のせいだよ……!
普通分かるだろ。
その日はイライラしたまま家に帰った。
それから碧斗と連絡をとることもなく、土曜日の夕方。
合コンの日がやってきた。
だがしかし……駅前のイタリアンの個室は、お通夜みたいに静まり返っていた。
「……で? 久遠くんは?」
正面に座るボブカットの女子、ミナちゃんが冷ややかな声で尋ねる。
俺は冷や汗をダラダラ流しながら、用意していた言い訳を口にした。
「あー……それがさ! 急に熱出しちまって」
「はあ?」
「来る気満々だったんだけどな〜!いやー残念!」
俺が必死に場を盛り上げようとするが、空気は凍りついたままだった。
「帰っていい?」
「えっ」
「久遠くん来ないなら意味ないし」
女子たちは露骨にスマホをいじり始めた。
健司が慌てて「ま、まぁここ料理も美味しいしさ、ゲームでもして楽しもうぜ」とフォローを入れるが完全に手遅れだ。


