「……出来るよ」
えっ。
碧斗の手が伸びてきて、俺の頬をそっと包み込む。
逃げる間もなかった。
碧斗の顔が傾き、俺の視界が彼の前髪で覆われる。
近づく顔。 重なる吐息。
俺はとっさに目をギュッとつむり、肩を強張らせた。
(く、来る……っ!)
しかし。
「……」
いつまで経っても、触れる感触は来なかった。
恐る恐る薄目を開けると、碧斗は笑った。
「でも、今はまだしない」
碧斗はパッと体を離すと、何食わぬ顔で元の体勢に戻った。
取り残された俺は、しばらく状況が理解できず、口をパクパクとさせることしかできなかった。
ドキドキした……。
心臓がうるさい。
ダメだ。
漫画の内容なんか、もう一ミリも頭に入ってこない。
もううう!!!変なことするなよな!
それは俺はちょいちょい青斗を意識しながら漫画を読んでいた。
しかし、その後は普通で拍子抜けした俺はいつも通り漫画に視線を向ける。


