ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


静かな部屋に、俺がページをめくる音だけが響く。
今日はなんとなく、この静けさが心地よかった。

「凪、そこ読み終わった?」
「ん? ああ、もうちょい」

碧斗が俺の手元を覗き込もうとして、身を乗り出してきた。

俺もページをめくろうと顔を上げる。

──ピタッ。
動きが止まった。

鼻先が触れそうなくらい近くに碧斗の顔があった。

長いまつ毛。通った鼻筋。 少し色素の薄い瞳がまっすぐに俺を映している。
やっぱりカッコイイよな。

碧斗は顔が整ってるし、手繋いだり、ハグしたりはギリ友達の延長でできるかもしれねぇけど……。

付き合うってことは、その先も望んでるってことなのか?
そんなの本当に俺と出来るのか?

単純な疑問が浮かび、俺はそれをそのまま聞いてしまう。

「なぁ……碧斗。お前さ」
「ん?」

「俺と……キスとか、できんの?」

言った瞬間、後悔した。

なに聞いてんだ俺は!
こんな雰囲気で聞くことじゃねぇだろ!

すると碧斗は真剣な顔で答える。