とりあえず失敗ってことだな……。
そうこうしているうちに俺たちは別れ道となる交差点までやってきた。
「じゃあな」
「うん、また明日」
また作戦を練り直さなきゃいけない。
俺は背を向けた。
「……凪」
呼び止められて足を止める。
振り返ると、碧斗が何かを言いたげに視線を彷徨わせていた。
「なに?」
「あっ、あの……今日さ」
碧斗はギュッと自分のカバンの持ち手を握りしめる。
「もう少し、一緒にいられないかなって……」
「え?」
「俺の家……たぶん、今日も誰も帰ってこないと思うから」
消え入りそうな声だった。
碧斗の顔を見ると、捨てられた子犬みたいに寂しげな表情を浮かべている。
いつもの碧斗とは違う。
俺は知っている。
碧斗の家のこと。母親が仕事で忙しくて、いつも家にひとりでいること。
中学の頃、その寂しさを埋めるために夜の街を彷徨っていたこと。
「……っ」
俺が言葉に詰まっていると、碧斗はハッとしたように顔を上げた。
そして無理やり作ったような笑顔を見せる。


