ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


しかし碧斗は、ニコニコしながら俺を見ていた。

「うん、食べるよ」

そして運ばれてきたパンケーキを切り分けながら言った。

「凪が食べてるの見るの、好きなんだ」
「……は?」

「お腹いっぱい食べてね」

そう言って、俺の口元についたクリームを指で拭い、それを自分の口へと運ぶ。

「ん、甘い」
「……っ!」

ドクン、と心臓が跳ねた。

や、やめろやめろ。
この彼氏ムーブ。
ドキドキすんだよ!!

「凪、顔赤いよ?」
「う、うるせぇ!」

俺は慌ててアイスティーを飲み干した。
けっきょく、その後も俺の作戦はことごとく失敗に終わった。

帰り道。
夕日が伸びる川沿いの道を、俺はとぼとぼと歩いていた。

「はぁ……」

また失敗した……。
俺の疲労感とは対照的に隣を歩く碧斗は、満足そうにニコニコしている。

「今日は楽しかったね、凪」

「……おう」

なんでだ。
なんで碧斗は、こんな俺のこと好きでいられるんだよ!

俺なんてガサツなところもあるし、カッコよくもないしモテないし?
碧斗ならもっと美人で、性格のいい子と付き合えるはずだろう!?