ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


人混みの向こう日陰に立つ長身の影がひとつ。
黒のキャップ、薄いグレーのシャツに黒のスラックス。

碧斗だ!

「ご、ごめん!寝坊した!」

息が詰まって、言葉が途切れる。
碧斗はキャップのつばを指で持ち上げ、少しだけ目を細めた。

「おはよう」

うお……カッコイイ。
私服もそりゃセンスがあるが、こいつ、やっぱイケメンだ。

改めてまじまじと見てしまう。
ってそうじゃなくて。

「本当悪かった……」
「いいよ、全然」

2時間遅刻されて怒りもせず笑顔を見せるなんて……。

「ずっと待ってたのか?」
「うん、いつ来るか分からなかったから」

マジかよ……忠犬じゃあるまいし……。
すると碧斗は無言でコンビニのビニール袋を差し出した。

中には冷えたお茶が入っている。

「お前……これ」
「走って来ると思ったから」

「碧斗~~~」

なんて気が利くやつなんだ。

デキすぎてる。
やっぱり碧斗がなんであんなにモテるのかは分かる気がする。

すると、碧斗は俺を見て、なぜかくすりと笑う。