毎日、毎日、母親はそう懇願した。
「高校にいってほしくてお母さん頑張ってたの。他のことはいい。だから高校だけは……」
(俺のことなんか、どうでもいいくせに体裁だけは気にするのかよ)
そう思いつつも、母が毎日仕事に追われているのは自分を育てるためあることは分かっていた。
そしてついに俺は折れた。
聞いてやるよ。母さんの願い……。
でももうこれっきりにしてほしい。
俺は、遅れていた勉強を取り戻すように机に向かった。
幸い勉強はやってみると、簡単にできた。
そして家から少し離れた学校を受験して無事に受かることができた。
今度はただ静かに三年間を過ごそう。
誰にもウワサされることなく、母の言う通り適当に高校に行って卒業する。
それでいい。
しかし、そう上手くはいかなかった。
「久遠碧斗です」
「なあ、あいつ……」
「絶対そうだよな!ヤバいらしいよ、中学の時……」
どこから漏れたのか、俺の過去のウワサは入学して数日も経たないうちに、あっという間にクラス中に広まっていた。


