ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

静まり返ったリビングのテーブルの上に、いつも無造作に置かれた一万円札が数枚。
温もりの代わりに渡されるその紙切れを握りしめ、俺はコンビニで買った弁当をひとりで食べた。

テレビの笑い声が、がらんとした部屋にむなしく響く。
学校にいる友達は「今日の夜はハンバーグだ」とか「週末は海に行って遊びに行くんだ」とか家族で楽しそうな話をよくする。
でも俺にはそれがわからなかった。

うらやましいと思うと同時にさみしさが襲ってきて、もうそんな話を聞くのも嫌になってしまった。

中学に上がると、だんだん学校に行くことすら面倒になりはじめた。

俺と彼らは違う人間だ。
教室で笑い合うクラスメイトたちが、まるで違う生き物に見えた。

昨日のテレビ番組、部活の愚痴、親がうざいという話。
彼らが夢中になる話題のどれひとつ、俺には共感できるものがなかった。

夕食の匂いがする家に帰り、「おかえり」という声に出迎えられる。
俺の世界にそんな温かなものはない。

俺にとって家は、蛍凪灯の白い光が照らすだけの静かな箱だ。