ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


「凪……?」
「今日、教科書重いんだよなぁ〜だから碧斗が俺のカバン持ってくんね?彼氏ならそれくらいやるだろ?」

碧斗はぽかんとしていた。

ほら、不快になるだろ?
カバンくらい自分で持てって話だもんなぁ。

俺が急にこれ言われたら、ブチギレる自信があるぜ?
ふふんっとえらそうに碧斗の反応を待つ。

すると彼はさらりと言った。

「ああ、凪が持ってほしいなら全然持つよ」
「えっ」

碧斗は眉ひとつ動かさず、俺のカバンをすっと受け取った。

ちょ……。
そのまま肩に軽々と掛け、なにごともなかったかのように歩き出した。

「今日の1限さっそくテストあるね」
「いやいやいや……!」

お、おかしい。
なんで受け入れるんだよ!

せめて嫌な顔のひとつくらいしろよ!

「どうしたの?」
「あ、いや……カバン……ほ、ほんとにいいのか?」

俺が聞くと、碧斗は目を輝かせながら言った。

「もちろんだよ。凪が俺に頼ってくれるの、なんだか嬉しいし……それに彼氏ってようやく認めてくれたみたいだから」

ち、ちげぇ……!
違う方に捉えちまってる!

まずい、彼氏だからとか余計な言葉付け加えなければ良かった……。

けっきょくわがまま作戦は失敗に終わった。
ええい、もういい次だ次!

俺には何個も作戦がある。
1個失敗したくらいでめげないからな。