ふとスマホの通知が気になって、つい歩きながらポケットを探る。
そのときだった。
角を曲がった先から、エンジン音が唸るように近づいてくる。
想像より速いスピードで、真っ赤な車が突っ込んできた。
やべ、避けねぇと……。
足を動かそうとするが、とっさのことで動かない。
このままじゃ轢かれる!
そう思った瞬間──。
「っ……!」
ぐい、と腕を力強く引かれた。
すぐ横から伸びてきた碧斗の手が、俺の体を引き寄せる。
引っ張られた勢いで少しよろけて、気づけば碧斗の腕の中にいた。
「よかった……」
車が目の前を風のように通り過ぎていく。
「……あっぶな」
我に返って、思わずそうつぶやいた。
心臓がバクバクしているのに、腕を掴んだ碧斗の手は驚くほど落ちついていた。
「平気だった?」
「ああ、なんとか……」
碧斗の手が離れていく。
つーか、碧斗って胸板の筋肉すげぇな。
けっこう固かったし、服越しでも分かるこの厚み?
俺と全然タッパが違う泣。


