ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


玄関のドアを開けると、ひやりとした朝の空気が頬を撫でた。
そして、今日もそこには……。

「おはよう、凪」

俺の家の門に寄りかかって、碧斗が立っていた。
今日も、だ。
なんでか急にこいつは律儀に俺を迎えに来るようになった。
今まではこんなこと一切なかったのに、なにを考えてるかは分からない。

昨日の……。

『好きだよ』

あのまっすぐにこっちを見て言ってくる言葉もまじで意味が分からない。
冗談っぽく言ってくれればいいものをあいつはまるで本気みたいに伝えてくる。

隼人のやつ……時々、こういう突拍子もないことをして驚かす節があるんだよな。

住宅街を抜けて坂をのぼる。
その時、俺は碧斗にたずねた。

「今日の宿題やった?」
「うん。やったよ」
「よっしゃ、今日も見せて〜」

「いいけど、凪。勉強ついていけてるの?」
「そんな母ちゃんみたいなこと言うなって」

碧斗は優しいからいつも宿題を見せてくれる。
あいつらふたりにはめちゃくちゃ怒られるんだけどな。