「今回こそはいける気がしたんだけどなあ……」

一つ下の学年の天谷唯奈ちゃん。
たまたま唯奈ちゃんが廊下で、ハンカチを落としたことから俺たちの出会いは始まった。

ハンカチを拾って渡したら、少しはにかみながら「ありがとうございます」って言われて、その顔が俺には天使みたいに見えたんだよなぁ……。

それからすれ違うと話をするようになって、おとなしそうな見た目なのに、話すと案外ハキハキするところとか、正義感が強いところが好きだった。

『凪くんみたいな人、話しやすくて一緒にいると楽しい』

なんて言ってくれたから、これはもしかしたらイケるかもって、期待して告白したらこの様だ。

「その気がするが、毎度ハズレてるのよ。もうちょっとデータ収集してからいけよ~普通彼氏いるかどうかくらい調べるだろ」

「それは分かってるんだけどさぁ……」

反論する気力もなく、はぁとため息をつく。

いつも勢いで行動してしまう自覚はある。
すると、その隣で静かに笑っていた綿貫一樹(わたぬき・いつき)が言った。

「悠馬は恋すると周りが見えなくなるからな」

一樹は黒縁メガネが特徴的で勉強が得意な理系男子。
趣味は読書らしく、人混みが嫌いで、とにかく核心を突くことを言ってくるので、よくグサッとくることも多い。