ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


碧斗の唇がわずかに開いたまま固まる。

「……今、なんて」

掠れた声が隙間から漏れた。

「だから、好きだって……」

そう何度も言うと恥ずかしいだろ……!
だんだんと声が小さくなっていく。

すると碧斗は信じられないとでも言いたげに言った。

「本当に?罪滅ぼしとかで言ってない?」
「バ……ッ、言ってねぇよ」

俺の気持ちをなんだと思ってんだ!
俺は重ねていた手にさらに力を込めた。

「ずっと言おうと思ってたから。花火大会でキスした時に……俺って碧斗のこと好きなんだなって分かったし……」

ぽりぽりと頬をかくと、碧斗はようやく信じてくれたようだった。

「どうしよう……嬉しい」

碧斗は頬をわずかに染め、愛おしそうに目を細めていた。

「……なんて顔してんだよ」

俺を捉える視線はどこまでも優しい。
張り詰めていた心が、じんわりと溶かされていく。

ずっと伝えることに戸惑っていたけれど、この顔を見られるなら勇気を出してよかった。

好きって伝えるの……なんかこっぱずかしいな。

ちらりと碧斗に視線をうつすと、ちょうど碧斗もこっちを見ていた。

目が合う。

──ドキン。