ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


「ひどいこと言って碧斗のこと、傷つけた。でも廊下で言ったこと……本気で思ってるわけじゃないんだ。みんなの前で、キスしたところ見られれて……パニックになって……つい」

碧斗はなにも言わない。
ただ、隣で静かに息をしている。

沈黙が痛い。
もう、許してもらえないかもしれない。
もう別れることになるかもしれない。

それも覚悟はできてる。
俺が唇を強く噛みしめたその時。

「……うん、知ってた」

碧斗はぽつりと言った。

穏やかな声だった。
怒っている様子なんて少しもない。
俺は呆気にとられて鼻をすすった。

「……なんで」

意味が分からなかった。
あんなにひどいことを言ったのに。
許されるはずがないと思っていたのに。

「だって凪は人のこと傷つけようとする人じゃないから……それは一番俺が分かってる」

碧斗……っ。

「でも俺……凪のことになると自信がない。凪が嫌がることはしたくないのに、でも……キスしたこと、嬉しくて……凪から離れてあげなくちゃって思っても、全然出来ない」