「……ごめん。俺、別に飛び降りようとなんて……」
「えっ。だって、あんな……!」
今にも柵を越えそうだったぞ!?
「……ただ、考えごとしてただけだよ」
「え……」
押さえつけていた腕から力が抜ける。
「……まじ、か」
碧斗は、飛び降りようとしていたわけじゃなかった。
俺が勝手に最悪の勘違いを……。
全身の力が抜けていく。
よかった……。
「本当に……よかったぁ」
俺はごろんと地面に寝そべった。
あーもう。
なんで冷静に判断できねぇんだ、俺は!
勢いばっかりで行動しやがって……!
「凪、俺が飛び降りるんじゃないかと思って急いでこっちに来たの?」
「あ、いや、その……焦って」
「あんな必死な顔で?」
「う"……」
仕方ねぇだろう。
あの時は考えてる余裕なんてなかったんだから。
その時だった。
碧斗の口元がぷるぷると震えだした。
「……ふっ」
「え?」
「……ふ、ふははっ……! あはははは!」
碧斗が、腹を抱えて笑い出す。


