「ちょっと、話そうか」
「え、あ、でも俺、用事……」
「はいはいウソはいいから」
碧斗は俺の腕を掴んだまま、有無を言わさず歩き出した。
「おい、どこ行くんだよ!」
「……屋上」
屋上のドアを開け、カンカンと錆びた階段を上る。
碧斗は、屋上のフェンスの前でようやく俺の腕を離した。
お互いに向き合いつつも、気まずい空気が流れる。
「凪」
碧斗の声は、いつもより低い。
「……なんで避けるの?」
そ、そんなの言えるわけねぇだろ……!
キスしちゃって意識しまくってます、なんて恥ずかしすぎる!!
「べ、別に?避けてなんか……」
「ウソだ……今日、ずっと変だった。朝から顔も合わせないしさっきも逃げた」
「そ、それは……!」
碧斗は、苦しそうに顔を歪めて言った。
「花火大会の、あれ。やっぱり嫌だったか」
……!
俺は、カッと顔が熱くなるのを感じた。
嫌とかじゃなくて、わかるだろ!
分かってくれ!
そんで聞かないでくれ!


