そもそも俺はこんなに人に対して気持ちが動いたのが初めてだったんだよ!
今までは感覚で好きかも、と思ったらすぐにそれを伝えてた。
だからそれ以上先に進んだことはなかったし、自分の気持ちがこんなに荒波みたいに動いていくのも初めてで……。
どうしたらいいか分からない。
オマケに経験もねぇし(泣)
碧斗は誰かと付き合ったことあんのかな。
……あるよな。
あんなにモテるんだから。
それは女か?それとも男?
あーもう!
色々考えすぎだ!俺らしくねぇ!
それから俺は昼休み終わりのチャイムと共に教室に戻った。
碧斗がなにか言いたげに俺を見ていたが、俺は知らないふりをした。
冷静に、いつも通りにだぞ俺……。
そして放課後。
俺は誰よりも早くカバンを掴んだ。
隣の席を盗み見る。
碧斗は日直の仕事で教壇に立っていた。
先生と何か話している。
チャンスは今しかない。
あいつが背を向けている隙に教室を出るんだ!
「……よし」
足音を消して廊下へ滑り出る。
下駄箱へ向かい、くつを脱ごうとしたその時。
──ガシッ。
「……みーつけた」
右肩に重たい衝撃が走る。
恐る恐る後ろを確認すると、そこには、笑顔の碧斗が立っていた。
爽やかに笑っているのに目が笑っていない。
「どこ行くの?」
「か、帰るんだよ!」
「俺を置いて?」
うう……。
捕まっちまった。
碧斗は俺の首の根っこを掴むように確保した。


