俺は、碧斗の顔をまともに見ることができなかった。
しかし碧斗はいつもと変わらない様子だ。
自然な動作で俺の隣にいる。
こいつ……!俺とキスしたこと忘れたのか!?
普通お前の方がもっと恥ずかしがるだろ!
こういうことも俺よりも慣れてるってか?
「凪?」
俺が顔を上げないのを不審に思ったのだろう。
碧斗が俺の机に手をつき、顔をのぞき込んできた。
「顔、赤いぞ。どうした?」
「……!」
顔を近づけられると唇に視線がいってしまう。
「な、なんでもねえ!」
俺はガタン!とイスを鳴らして立ち上がった。
「ちょ、トイレ!」
「え、あ、凪?」
碧斗の戸惑う声を背中に浴びながら、俺は教室を逃げ出した。
もうあいつの顔、普通に見れねえじゃねぇか……!


