ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


俺と碧斗のことじゃねぇか!
昨夜の出来事が鮮明に蘇ってきて、心臓がうるさく鳴りだしたその時。

「おはよう」

静かな声と共に、碧斗が教室に入ってきた。

「お、碧斗!いいとこに来た!」

悠馬が待ってましたとばかりに碧斗を手招きする。

「今ちょうど花火大会のジンクスの話をしてたわけよ~」

悠馬はそんなことを言うと、碧斗の肩がぴくりと揺れた。

もしかして、碧斗のやつ……そのジンクスを知ってたのか!?

「そうなんだ」

いや、この反応は知らなさそう?

「まっ、凪は家で留守番してたからなにも関係ねぇけどな」

その言葉になにも言い返すことはできなかった。
違うって言った方が厄介なことになりそうだし、ここは黙っておこう。

「凪」

するとふと碧斗に名前を呼ばれる。

──ドキン。

「おはよう」

「お、おは……おはよう」

声が裏返った。

最悪だ。
これじゃ意識してますと言ってるようなものじゃないか。

俺は咳払いをして誤魔化そうとする。

「い、委員会!早かったな!お疲れ!」
「うん。早めに終わらせてきたから」