ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


「わ、わりぃ!」

心臓が今にも口から飛び出しそうなくらいバクバクと鳴っている。

事故とはいえ、これはキスだよな……!?

俺がひとりでパニックになっていると、今まで黙っていた碧斗が、そっと俺の腕に触れた。

「凪」

びくり、と体が跳ねる。
おそるおそる碧斗の顔を見ると、その目に息を呑んだ。

どこか熱を帯びた瞳が、まっすぐに俺を見つめる。

「……しちゃった、ね」
「……っ」

心臓がバクバクとうるさい。

碧斗は頬を赤く染めながら愛おしそうに俺を見つめた。

そ、そんな目で俺をみるな!

それからのことはなにも覚えていない。

いつの間にか終わっていた花火も、そのあとに食べたものも、なにひとつ覚えていなかった──。