「じゃあ送っていこうか」
「ううん。私は大丈夫だからここで。碧斗くん今日は付き合ってくれて本当にありがとう」
美月さんはそう言うと、座り込んでいる俺にも「凪くんも、またね」と優雅に微笑み、あっという間に人混みの中へと消えていった。
行っちまった……。
嵐のように去っていき、俺と碧斗だけがその場に残される。
「もしかして、凪……俺のこと探してくれてた?」
「はぁ!? 探してねぇし!」
俺は碧斗を睨みつけた。
「たまたまだよ、たまたま!俺は別に、祭りの雰囲気を味わいに来ただけで……」
「ひとりで?」
「悪いかよ!」
「ふーん?」
碧斗は全然信じていないような顔で楽しそうに相槌を打つ。
「ねぇ、手繋がない?」
碧斗が、俺の目の前にすっと手を差し出した。
「お祭りさ、見ようよ……ふたりで」
「でも、誰か見てるかもしれねぇだろ……」
「大丈夫だよ。ほら、みんな前ばかりみてる。きっと誰も見てないよ」
そんなに言うなら……。
もう外も薄暗いしな。
「じゃあ……」
俺はしぶしぶ差し出された手を握った。


