ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる



その時だった。

「いいこと思いついた!」

ちょうど校門をくぐったタイミングで俺は碧斗に向かって手を差し出す。

「碧斗……手、貸してみ?」
「ん?」

一瞬だけ眉を上げた碧斗だったが、素直に掌を出してくる。

「ほら、こうやってだな」

俺はわざとゆっくり指を一本ずつ絡めていき、最後にぎゅっとにぎってやった。

「……凪、なに?これ……」

「へへん、恋人つなぎ!絶対あいつらびっくりすっから」

くだらないイタズラを仕掛ける時のあのワクワク感はたまらない。

碧斗もノッてきたことだし、ひと笑いもらっちゃいますか。
手を繋いだまま廊下を堂々と歩く。

人の視線が痛くて恥ずかしくなったが、こういうのは照れたら負けだ。

ドアの前で深呼吸。

「よし、いくぞ」

俺はそのまま教室のドアを開けた。

よし、悠馬と一樹来てるな。
わざとらしくにやにやしながら2人の元へ歩いていく。

「おはよー悠馬、一樹」

さぁどんなツッコミがやってくるかな。
そんなことを楽しみにしながら反応を待っていると……。

「おう、おはよう!」
「……おはよう」

返ってきたのは、まさかの普通すぎる挨拶だった。