ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


「……ああ。お前らさ、碧斗……見かけなかったか?」

その質問に、良と健太は顔を見合わせた。
そして、健太が「ああ!」と思い出したように手を叩いた。

「久遠なら、さっきあっちの鳥居のほうで見たぜ。なんか、すっげー美人の女の人と歩いてた」

えっ……。
美人の女の人……?

「モデルかよってくらいキレイな人でさ、浴衣もめっちゃ似合ってたよな」
「ああ、なんか雰囲気も良かったし彼女なんじゃないか?」

か、彼女……。
ウソ、だろ……。

「へ、へぇー、そうなんだ。……サンキュ」

俺は無理やり笑顔を作って、ふたりに背を向けた。

人混みの中に紛れ、ひとりになる。
祭りのにぎやかな音が、急に遠くに聞こえ始めた。

なんだよ、碧斗のやつ。
俺には散々言っておいて、自分は女とお祭りですか?

俺を置いて、ねえ……。
クッソ……。

胸のあたりが、モヤモヤする。
なにしに来たんだ、俺は。

ひとりで惨めな気持ちを味わうために、わざわざこんな人混みの中へ来たんじゃない。

もう碧斗なんか、嫌いだ。