ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる



コイツのそういうところが女子にモテるんだろうけど。
まぁいい。
今日くらいは碧斗のノリに付き合ってやるか。

「行ってくる」
「行ってらっしゃい」

俺は母親に声をかけると、玄関を出て隼人のところに向かった。

「じゃ、行こーぜ」

あーあ、ねむ。
まだ完全に目が覚めきってないな。
眠い目をこすりながら歩いていると、ふと碧斗が足を止めた。

「どした?」

俺も足を止めて碧斗を見る。
すると碧斗はなにも言わず、俺の顔をじっと見つめた。

その真剣な眼差しにどきりとする。
こいつ、本当無駄に顔がいい。

少しは分けて欲しいぜ。

「なんだよ」
「動かないで」

キレイな指が伸びてきて、俺の目元にそっと触れる。
なんだか居心地が悪くてどんな顔をしていいか分からなかった。

「まつげ。ついてた」

碧斗は小さく呟くと、取ったまつげをふっと吹き飛ばした。

「ああ、サンキュー」

朝の光もあってか碧斗が、やけにカッコよく見えた。

クッソ、俺が碧斗くらいモテモテだったら、こんなに恋愛で悩むこともなかっただろうに。

「……凪、大丈夫?」

碧斗が少し身を屈めて、真正面からのぞき込んでくる。