ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


「……凪!」

すると突然碧斗が俺に抱きついてくる。

「うおっ!?」

いきなり抱きつかれて俺はよろめいた。

「苦しい……!加減しろ!」
「無理……嬉しすぎて死にそう」

碧斗が俺の肩に顔を埋める。
首筋に熱い息がかかってくすぐったい。

「夢じゃないよね?」
「夢じゃねぇよ」

「凪……好き」

耳元で囁かれる甘い声。
心臓がうるさいくらいに跳ねる。

俺はため息をつきつつも、その背中に腕を回した。

まあ……悪くないか。
碧斗の背中をポンポンと叩く。

ノリで付き合ったはずなのに、気づけば本当のお付き合い。

「ほら、帰るぞ」
「うん……」

碧斗が身体を離す。

(不思議なもんだな……こういうのも悪くないって思ってるなんて)

差し出された手を、俺はしっかりと握り返した。