ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


男は「……行くぞ」という言葉だけを絞り出すと、仲間たちと共に足早に路地裏から去っていった。

路地には俺と碧斗のふたりだけが残される。

沈黙が気まずい……。
なにを言っていいか分からなくて、しどろもどろになっていると碧斗は言った。

「こんなところ、凪は来ちゃダメだよ」

そう言って立ち去ろうとする。

「待てよ!」

俺が声をかけると、その肩がわずかに揺れた。

「なんで……なんで、こんなところにいるんだよ!お前、もうあいつらとは関わらないって……言っただろ」
「…………」

「なんで、約束破るんだよ……!」

俺の言葉に、碧斗がゆっくりと振り返った。
その顔には悲しみの表情が灯っていた。

「……俺と凪は生きてる世界が違うからだよ」

俺はギリっと手を握る。

「違くない!」

「違うよ……!俺は、ずっとそうなんだ。誰も俺を必要としてくれる人はいない。その場が楽しければいい。そういう関係しか築けないんだ。色んな人に愛される凪とは違う」