男が大きく拳を振り上げる。
殴られる!
俺が目を固く閉じたその瞬間。
ガッ、と骨が軋むような鈍い音がした。
恐る恐る目を開けると、俺の目の前で碧斗が男の拳を寸前で掴んでいた。
碧斗の黒髪が顔にかかり、その表情はよく見えない。
だけど、その場を支配するような冷たい空気がそこには存在していた。
「……篤郎」
碧斗が静かにつぶやく。
「もしかしてと思うけど……今、殴ろうとした?」
「……っ、い、や……だってこいつが」
「だってじゃなくてさぁ……俺行こうって言ったよね?」
碧斗が腕にギリと力を込める。
「いっ……てぇ!離せ、碧斗!」
男の顔が恐怖と苦痛に歪む。
「じゃあその手、下げろよ」
低い声でそう放つ碧斗。
「分かった、分かったから……」
その声には、俺もこの男たちもその場にいた全員が凍り付いた。
そして最後に言い放った。
「……二度と、凪に触るなよ」
「なんだよ、お前から声かけて来たくせに!もう関わんねぇよ!」


