ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


店の前にはガラの悪い連中がたむろしている。
足がすくみそうになった。

けれどここで引くわけにはいかない。

俺は意を決して踏み込んだ。
するとその時。

店の脇にある薄暗い裏路地から声が聞こえてきた。

「やっぱりクラブは最高だよな」
「碧斗が久々来てくれたから盛り上がったわ」

俺は声のする方を見てみると……そこに碧斗はいた。

なに、してんだよ……。

数人の男たちが壁に寄りかかり、タバコを吸っている。
それをつまんなそうに見ている碧斗がいた。

もうここには来ないって言っただろ!
俺たちを大事にしたいって言ってただろうが!

俺は居ても立ってもいられず、路地へと足を踏み出した。

「碧斗!」
「凪……!なんでここに……っ」

碧斗が驚いた顔をする。

俺の声に、周りの男たちも反応した。

「なんだこいつ?」

視線が一斉に俺に突き刺さる。

「碧斗帰ろう!こんなところにいたらダメだ!」

俺が碧斗に近づこうとしたその時、ひとりの男が俺の前に立ちはだかった。

ピアスが開いていて、タバコを吸っている頭ひとつ分はデカい男だ。