ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


俺はスマホを手に持ちここから数駅先の雑居ビルが立ち並ぶエリアへと走った。
もし本当に碧斗がクラブに行っているのだとしたら、検討はついてる。

昔碧斗が話しててくれたことがある。

『悪でいると悪が付いてくる。人間そうなるようになってるんだよ。最初の頃は俺もよく周りの不良にクラブに行こうって誘われてたし』

『はぁ?だいたいなんでクラブなんか行けるんだよ、俺たち高校生だろ!?』

『知り合いがやってるクラブが二駅先にあるんだって。そこなら未成年でも顔パスで入れてくれるんらしいんだよ。でももう行かないけどね。凪たちになにか危害が加わったら嫌だし』

「はぁ……はぁ……!」

息が上がって喉が焼けるように痛い。
すれ違う人が不審そうに俺を見る。

構っている余裕なんてなかった。
頼む、いないでくれ……。

碧斗はもう足を洗ったって言ってただろ?
俺が好きな碧斗のままでいてくれ。

駅前の喧騒を抜ける。
路地裏へ入ると空気が淀んでいくのが分かった。

腹に響く重低音。
間違いない。ここだ。