「……なに?」
その一言で俺は言葉につまった。
「話がしたいんだ。今、どこにいる?」
「いいたくない」
「お願いだ、大事な話だから」
電話からは、ズン、ズン、と腹の底に響くような重低音が聞こえてくる。
なんだ……?
甲高い笑い声。割れるような大音量の音楽。
「碧斗……お前、本当にどこにいるんだ?」
尋ねると、碧斗は静かに言った。
『関係ないだろ』
「関係なくねぇよ!まさかクラブに……?」
『うるさいな。切るよ』
「待て、碧斗!」
俺の制止も聞かず、一方的に電話は切られた。
耳元で、ツーツーという無機質な音がむなしく響く。
あれは絶対にクラブだ。
頭の片隅で、忘れていた記憶が蘇る。
俺とここまで親しくなる前の中学の頃、碧斗が素行の悪い連中とつるんでいた時期があった。
夜な夜な繁華街に繰り出しては、危ない遊びに手を出していたこと。
俺や悠馬たちといるようになって、あいつは「もう、あんな場所には行かない」と、きっぱり足を洗ったはずだった。
それなのに。
「なにしてんだよ……」


