ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる


「……っ」

喉の奥が熱くなって言葉が出てこない。

俺は唇を強く噛み締めた。
あいつが俺に向けてくれていた笑顔。
わがままを聞いてくれた時の優しい目。

あれが全部……俺への好意だったとしたら。
俺はあいつの恋心を土足で踏み荒らしたことになる。

「……俺、どうしたら」

視線が自然と床に落ちた。

謝って許されることじゃない。
もうあいつは俺の顔も見たくないかもしれない。

「俺、あいつに嫌われた……。もうあいつ、たぶん俺と話してくれねぇと思う……」

俺が弱音を吐くと、悠馬がふうと大きなため息をついてつぶやいた。

「好きだから凪のその行動が嫌だって思ったんだろ」

「だからやれることはあるんじゃないの?」

一樹がメガネの奥から、まっすぐな目つきで俺を見る。

やれること……か。
ふたりはそれだけ言うと、立ち上がった。

「じゃ、俺らはこれで」
「邪魔したな」

ふたりは静かに俺の部屋を出ていく。