「付き合ってください!」

放課後の体育館の裏。
俺は今、告白をしている。

ぐっと頭をさげて手を前に差し出す。
心臓がどくん、と大きく跳ねるのがわかった。

お願いだ。この手をとってくれ。
今度こそ……今度こそ、この……俺の運命の相手と一緒になって夢のハッピーライフを送るんだ。

その時、彼女は言った。

「……無理です」
「えっ」

ぽかん、とする。

「彼氏いるので無理です!」

あれ、俺……今フラれた?
しかも彼氏がいる!?

覚悟を決めた第23回目の告白はあっけなく散った。

「クソおおおお、またフラれた~~~~!」

教室に戻る廊下で声にならないうめきを押し殺しながら、俺……浅海凪(あさみ・なぎ)は、体育館に繋がる階段下で待っていた友達の元へ足早に駆け寄った。

「まーたダメだったのかよ」

廊下の壁にもたれかかっていた加賀谷悠馬(かがたに・ゆうま)が大袈裟に頭を抱える。

こいつは派手な金髪のくせ毛にピアスという、校則ギリギリを攻める男子。
クラスのムードメーカーで、俺の失恋にも毎回つきあってくれる貴重な存在だ。

しかも毎回笑ってくれるから、こっちも救われるんだよなあ。