バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


「そこの君!今来た可愛らしい新入生くん!」

──ビクッ。
甲高い声が飛んできたかと思うと、俺の腕は掴まれていた。

「こっち来て~」
「えっ!?」

抵抗する間もなく、上座の席へと引きずり込まれる。
そこは既に出来上がったOBの女性の先輩たちがたくさんいた。

「ちょ、待っ……」
「お気に入り見つけた~」

「あーあ、香織がお気に入りホールドしちゃった。てか香織タイプ変わった?」

「そりゃそう、昔はカッコイイ人が好きだったけど、社会人になってからこういう癒し系の子が好きになったの」

ぎゅうっと抱きつかれ、酒と香水の混じった匂いが鼻をつく。

「ちょっ、離してください……っ」
「キミなに君?」

「広瀬ですけど」
「広瀬くん可愛い~肌すべすべ~」

四方八方から手が伸びてきて、俺の頬や髪を撫で回す。
まるで動物のような扱いだ。

もみくちゃにされながら、俺は遠くの篠原に視線を送る。

(助けてくれ……)

涙目で訴えるが、彼も社会人の男の先輩に捕まっていて動けなかった。