授業が終わり、俺は桜ちゃんと待ち合わせをした。
「よっしゃ〜レッツゴー!」
桜ちゃんは俺と腕を組みながら、ご機嫌に洋菓子屋に案内をした。
桜ちゃんは、いい意味でも悪い意味でも人との距離が近い女の子だ。
最初こそ驚いたものの、もうその距離感にも慣れてしまった。
「ここだよ」
扉を開けた瞬間、バターとバニラの香りがふわりと漂ってくる。
店内はアンティーク調のオシャレな内装で、ショーケースにはケーキやら美味しそうなものがたくさん並んでいた。
(男一人じゃ絶対入れねぇな……)
桜ちゃんについてきてもらって正解だった。
「コーヒー飲む人なら合うものがいいよね?日持ちもするしたぶん焼き菓子がいいよ! ここのクッキー、すごく美味しいんだ」
桜ちゃんが指差したのは、シックな缶に入ったクッキーの詰め合わせだった。
「なるほど、クッキーか。これなら休憩中に少しずつ食えるしな」
甘さも控えめな種類が入っているらしい。これなら隼人も食べてくれるだろう。
「よし、これにするわ」
「うんうん、いいと思う!」
俺は店員さんに頼んで、落ち着いた色のリボンでラッピングしてもらった。
可愛い紙袋を受け取ると、なんだか少し気恥ずかしいような、でも早く渡したいようなむず痒い気持ちになった。
(隼人……喜ぶかな)
べ、別に楽しみにしてるわけじゃねぇぞ?
でもあいつの嬉しそうな顔見れたら俺も嬉しいっていうか……。
次のバイトの時に渡すとするか。
「いいの買えてよかったね!」
「サンキュな桜ちゃん。マジで桜ちゃんのお陰だ」
「いえいえ」

