それからしばらくマニュアルを熟読していると、隼人は分かりにくそうなところを口頭で補足してくれた。
その説明はやっぱり要領を得ていて分かりやすかった。

昔から勉強を教えるのも上手かったもんな……。

「それで、このドリンクは冬だと……」

通った鼻筋。
シャープなアゴでどこか絵になる整った顔。
……っていうか。
改めて思うけど、やっぱり隼人ってカッコイイよな。

「……聞いてる?」

「あ、はい! 聞いてます!」

低い声に背筋が伸びる。
すると彼は言った。

「敬語じゃなくていい」
「えっ」

「同じ歳だから」

「あっ、はい……」

それから思ったより早く、初日の研修は終わった。

覚えるのに必死で頭を使っていたら、気づけば時間は経っていた。

「ってことで、またたぶん俺のいる時にシフト入ると思うからよろしく」

「よろしくお願いします」

俺は頭を下げた。

最初こそ、元カレなんですけどおおお!って緊張していたものの意外と普通だったな。

っていうか、もしかして……。
隼人のやつ、本当に俺のこと忘れてる!?

そ、そうだよなぁ。
だって隼人は高校でも人気者で、友達も多かったし……忘れられても無理はない?