バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

顔が熱い。
どういう顔をしていいか分からない。

「あ、あの……」

だって今までの隼人からのアプローチが全部ずっと俺を好きだったものだって思ったらそりゃ……っ。
恥ずかしくもなるだろ!

「返事、聞かせてほしい……陽も俺のこと嫌いになったんじゃないんだよね?」
「それは、そうだけど……」

隼人が俺の手を取り、真剣な眼差しで問いかけてくる。

俺の思っていたことは全部、勘違いだと知った。
だからもう悩むタネは何もないのだけど……それですぐに付き合いますとはなれないつーか。

まだ全然心が追いついてない。

だってずっと嫌いだ!って隼人のこと言ってたんだぞ。
それが俺の勘違いで、実は両想いでしたって言われて「そうか!じゃあより戻そう!」ってはなれない……っ。

俺はパッと隼人の手から自分の手を引いた。
俺は真っ赤な顔で、しどろもどろになりながら後ずさった。

「わ、悪い。付き合うとかはその……まだ考えられない」

すると隼人は分かりやすく落ち込んだ顔をした。
ああ、もう違う!そうじゃねぇし!

「こ、心が追いついてないっていうか……!整理する時間が欲しいんだよ!今はまだ……勢いで言うのは違うつーか……」

俺が顔を赤くして訴えると、隼人はふっと息を吐き、肩の力を抜いた。

「そっか」

短く呟いて見せた笑顔を見せると、隼人は立ち上がり、俺に手を差し伸べた。

「分かった。付き合うのは保留でいい。でも考えてほしい」
「……お、おう」

俺はその手を借りて立ち上がる。

「これで心置きなく陽に好きって伝えられるね」
「はぁ!?」

隼人は俺の手を握ったまま、ニヤリと楽しそうに笑った。