バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?


でも分からなくていい。
分かったところで傷つくだけだから。

「もう、やめてくれないか」

俺は立ち止まり、震える声で告げた。
これ以上、隼人のペースに巻き込まれたくない。

「俺は、隼人のそういう言葉にはもう騙されない」
「騙すって……」

「俺たちは終わったんだ。友達に戻れないって言うんなら……もう、他人になるしかないだろ」

こうするしかない。
中途半端に近くにいて、優しくされて期待して……最後に「嘘でした」って言われるのは、もう御免だ。

「俺、隼人と被らないようにシフト入れてもらえないか店長に相談するわ」

俺は隼人の目を見ずに言い放つ。

「じゃあな」

俺が背を向けようとすると、背後で息を呑む音がした。

「……なんで」

絞り出すような声。

「なんで、そこまでするの……」

振り返ると、隼人は酷くショックを受けた顔で立ち尽くしていた。

(……っ、まただ)

高校の時と同じ。
自分が振ったくせに、自分が裏切ったくせに、本当に傷ついたみたいな顔をする。
お前……俳優になれるよ。