俺が言い返すと、隼人は否定するように強く首を振った。

「違う!違う、けど……」

そして隼人は言葉を詰まらせた。
部屋に響くのは、お互いの荒い呼吸音だけ。
心臓が痛いくらいに脈打っている。

俺が何か言おうと口を開きかけた、その時だった。

「……ごめん」

隼人の声から、不意に力が抜けた。
あいつは、痛みに耐えるような顔でぎゅっと強く拳を握りしめていた。

「……絶対、俺が悪い。分かってるんだ」
「……隼人」

「でも……やっぱり無理だ」

隼人が顔を上げ、濡れたような瞳で俺を射抜く。

「陽のこと、友達なんて……思えない」

ドクン、ドクンと心臓がうるさい。
なにかが始まってしまいそうで、この状況から逃げたくなる。

「か、帰る!」

逃げようと俺が背中を向けた時。

「待って!」

隼人は俺の手をとった。

「は、放せよ」

ダメだ。
これ以上話を聞いたらダメだ。
止まっていた時間が……記憶が思い出されてしまう。