それから、俺たちが言葉を交わすことは二度となかった。

同じ教室にいても、視線が交わることすらない。
俺だけが胸に空いた風穴を抱えたまま、息を潜めて過ごした。

そして春が来て、三年生への進級と共にクラス替えが行われた。
掲示板に張り出された名簿の中に隼人の名前を見つけて俺のクラスとは別だと知った瞬間、俺は心の底から安堵した。

……良かった。
これでもう、毎日顔を合わせて心をすり減らさなくて済む。
物理的な距離ができれば、きっとこの痛みも薄れていくはずだ。

そうして季節は巡り、卒業式を迎えた。
俺は隼人がどこの大学を受験したのかも、どんな進路を選んだのかも知らないまま高校を卒業した。

(もう、二度と会うこともない)

大学に進学して新しい生活が始まれば、きっと全部過去の笑い話になる。
初恋は実らないなんて言うし、ただちょっと相手が悪かっただけだ。

そうやって必死に自分に言い聞かせて、蓋をしたはずだった。
それなのに……。

『教育係の三上隼人です』

神様ってやつは本当に残酷だ──。