「陽、そこの色、違う」
「うわ、まじか。……サンキュ、隼人」

隼人の意外と手先が器用なところや、俺のテニス部のどうでもいい愚痴をちゃんと聞いてくれるところとか、クールに見えて、案外面倒見がいいところがあったり……。
隼人と一緒に作業をしている時間が一番好きな時間になっていった。

「……ここ、色が足りないな」
「マジか。俺、切るわ」

俺たちは巨大なモザイクアートの作成に追われていた。
作業台代わりの机を挟んで向かい合い、黙々と色画用紙をちぎっては貼っていく地味な作業。
そんな作業も毎日続けば慣れてくるもので、俺たちはポツリポツリと言葉を交わしながら手を動かしていた。

「……あ、やべ」
「どうした?」

糊付けが甘かったのか、貼り付けたばかりの画用紙の端がペラリと浮いてきてしまった。

「くそっ、またかよ……」

指で押さえつけようとしたその時だった。

「……貸して」
「えっ」

俺が返事をするより早く、向かいにいた隼人が身を乗り出してきた。
スッ、と俺の手の上に隼人の手が重なる。

「……っ!?」

隼人の長い指が俺の指先ごと画用紙を押さえ込んだ。
距離、数センチ。
目の前に、隼人の整った顔がある。