『陽、好き』

ゆっくりと、隼人の顔が近づいてくる。

「はや、と……」

俺は受け入れるように目をつぶった。
そっと唇が重なる。

温かくて、甘い感覚。

「……ん……」

夢だよな?
そう分かっているのに、唇の感覚は妙にリアルだった。

俺は重たい瞼をゆっくりと持ち上げる。
その瞬間。

「……!」

俺の視界に映ったのは、至近距離にいる隼人の顔だった。
隼人は俺の両脇に手をつき、俺に覆いかぶさるようにして見下ろしている。

(……え?)

唇に残る確かな感触。
ぱちりと目が合う。

唇に確かに熱が残ってる。

「もしかして、キスした……?」

震える声で問いかけると、隼人の肩がビクッと跳ねた。

否定してくれ。
あれは俺が見た夢だと言ってくれ。

そう願う俺の気持ちとは裏腹に、隼人はゆっくりと体を起こし、俺から距離を取った。

「……悪い」

悪いってなんだよ。
ハッキリ言ってくれよ。

あっちにある充電器を取ろうとしただけ、とか……俺の勘違いだとか……言ってくれよ。