「あ、いや……その」
俺は頭が回らないまま、涙目でつぶやいた。
「明日までのレポートがあるのに……水筒が漏れて、パソコンが、死んだ……」
俺が泣きそうな声で呟くと、隼人は「あー……」と、珍しく少し同情するような声を出し静かに言った。
「……俺のパソコン使う?」
「……え、でも」
「俺のでよければ……貸すよ」
「いいのかよ……!」
救世主……!
今は隼人にすがるしかない。
「……レポート、終わったらすぐ帰るから貸してほしい」
俺が頼み込むと、隼人はカバンを背負って言った。
「じゃあ急いで帰ろうか」
こうして俺は隼人の家に行くことになった。
バイト先から歩いて十分ほど。
俺のアパートより、ちょっとだけ築年数が新しそうなマンションの前に着く。
オートロックを抜け、エレベーターに乗り込んだ。
……なんか、緊張するな。
一人暮らししてるって言ってたよな。
隼人の家ってどんな感じなんだろう……。
「……狭いけど、どうぞ」
そう言いながら隼人は家の鍵を開けた。

