カバンをごそごそと漁る。
その瞬間。
「……つめたっ」
カバンの底を持った手が妙に冷たくて湿っていた。
えっ……。
嫌な予感がして、恐る恐る中を覗き込む。
「ウソだろ……」
そこには、大惨事が広がっていた。
ちゃんと閉めたはずの水筒の蓋が緩んでいたのか、中身のお茶が全部漏れ出して、カバンの底がタプタプになっていた。
そして、その茶色い海にどっぷりと浸かっているのは……俺のノートパソコン。
「あ、あ、あ……!」
血の気が引く音がした。
俺は震える手でパソコンを取り出し、ロッカーにあったタオルで必死に水分を拭き取る。
頼む、無事でいてくれ……!
祈るように電源ボタンを長押しする。
しかし。
「……」
うんともすんとも言わない。
画面は真っ黒なままで、起動音がする気配もない。
何度押しても、反応はゼロだった。
「お、終わった……」
よりにもよって、今日!?
レポート締め切り2時間前に、こんなタイミングで水没して壊れるなんて……!
絶望で膝から崩れ落ちそうになった、その時。
「……どうした?」
青ざめる俺の隣で、着替えていた隼人が俺の異変に気づいた。

