あれから、何度かバイトに入った。
隼人とも友達としての距離で接することが出来て悩むようなことも消えた。

「豆の種類はもう完璧!あとは作り方をマスターしたら俺はひとりだちだ!」
「そう簡単に行くといいけど」

「なんだと?絶対すぐマスターしてみせるからな」

冷房の効いた涼しい休憩室で、俺たちは向かい合って笑い合っていた。

変に意識してギクシャクすることもない。
目が合って気まずく逸らすこともない。
いい距離感だ。

「じゃあ休憩終わったら、広瀬くんにはレジメインで入ってもらいます」
「はい!」

「三上くんは広瀬くんのフォローしてあげてね」

俺がバイトに入る時は決まって隼人がいたが、隼人は普段通りで淡々と業務を教えてくれた。
そのお陰もあってか、俺は平日の人の少ない夜の時間帯にようやく一人でレジを任されるようになっていた。

「いらっしゃいませ!」
「ホットコーヒー、レギュラーサイズで」
「はい、かしこまりました!」

俺は、最初の頃はテンパりまくっていたコーヒー作りも、今は落ち着いてつくれる。