「……陽」
ふいに低い声が俺の名前を呼んだ。
この声……。
振り返ると、隼人がそこに立っていた。
「探した。ここにいたの?」
「え? は、隼人……? なんで……」
俺が混乱していると、隼人は俺の腕を掴んだ。
隼人は、俺を勧誘していた上級生を一瞥すると、無表情で言い放った。
「そういうの迷惑なんでやめてもらえますか?自分の進路は自分で決めるんで」
ハッキリと告げると男は戸惑った表情を浮かべた。
「あ、いや……強制してたわけじゃ」
「じゃあ」
「ちょ、おい!?」
隼人は男を完全に無視し、俺の腕を掴んだまま学食を出ていった。
人混みをかき分け中庭を突っ切り、講義棟の裏手まで来たところで隼人はようやく俺の腕を離した。
「ああいうの、大学内でも注意喚起されてるから気を付けた方がいいよ」
「あ、ああ。ありがとな」
助かった……。
隼人がいなかったら、連絡先は交換してたな。
そして押しに弱い俺なら最初だけって参加してる未来が見える……。
「じゃあ、またバイトで」
隼人はそれだけを言うと俺に背中を向けた。

